発信する大家さん せいやです!
普通に生活しているだけで水回りや、窓にはよくカビが生えたりしますよね。窓のサッシなどであれば、掃除すればきれいになりますが、お風呂やキッチンのゴムの部分(コーキング)のカビは放置していると根元まで入り込み、落とす事が困難になります。
では、これが賃貸物件の場合、退去時このお風呂のゴムのカビは誰の負担で原状回復しなければならないでしょうか?
入居者?大家側?
答えは、条件次第ですが入居者さんの場合が多いです。
あなたが入居者であれば、余計な退去費用は払いたくないですよね。
そこで今回は、賃貸のカビに対する原状回復の責任問題を国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考に解説します。
この記事をみれば、あなたが賃貸物件のカビに対して原状回復の責任があるかどうか分かります。
私『発信する大家せいや』は、宅建士として不動産の管理や仲介の仕事を経験し、現在大家として40戸の物件を管理してます。
現役大家の立場からトラブル対策をお話ししていきます。
それでは、あなたはの賃貸のカビは誰の責任で回復しなければならないか、条件を確認していきましょう。
お風呂のコーキング・ゴムのカビの原状回復の責任と条件は?
結論から言うと、賃貸のカビに対する責任問題ですが、入居者のあなたが換気や掃除を適切に行なっていたのであれば退去時に払う必要はありません。
しかし、そうでなければ入居者負担で原状回復する必要があります。
なぜお風呂のコーキング・ゴムのカビは入居者負担になるのか?
どのような根拠があって上記の様な基準を話しているかと言うと、国土交通省からまとめている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が理由です。
国が1998年から敷金や原状回復のトラブル回避のためガイドラインを作成しており、何度も見直しをされながら2020年の民法改正により、ようやく貸主借主の負担の線引きがはっきりしてきたと感じています。
上記の国土交通省のサイトでガイドラインを確認できますが、色々書いてあって「このガイドラインはどのような事に役に立つの?」と思うかもしれません。
簡単に言うと「敷金はガイドラインと照らし合わせて必要な費用以外は返してもらえるよ!参考にしてね!」という事です。
カビ問題に関する「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」解説
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は印刷するとボリュームがあり、細かい事までルールが書かれています。
資料まで合わせると170ページくらいありますので、まるで論文ですね。
大家のせいやが退去の立ち会いをする時は、トラブルが少なくなるよう入居者さんと一緒にこのガイドラインを持参し退去の手続きをします。
できる限り退去される入居者さんにも納得していただけるよう努めています。
こんな分厚い資料を読むのは大変だと思っているあなた!
今回は大丈夫です。
大家のせいやが簡単に説明し、今回のカビに関する事例を説明していきます。
ガイドラインの構成は下記の様に分かれています。
第1章「原状回復にかかるガイドライン」
第2章「トラブルの迅速な解決にかかる制度」とQ&A
第3章「現状回復にかかる判例の動向」
資料
原状回復のルールを理解するだけなら第1章だけ読んでもらえれば十分です。
第2章は裁判の話とトラブルのQ&A。第3章は裁判の事例です。
第1章は30ページ程度なので読みましょう!…
しかし「30ページも読みたくない!」という人もいると思うので、今回のカビ問題に必要な部分だけを要約しますね。
原則として
・原状回復とは、賃借人が借りた当時の状態に戻す事が目的でない
・ 『①賃借人の通常の使用により生ずる損耗』と『②それ以外の消耗』に分けられる
・『②それ以外の消耗』の場合は入居者負担として原状回復する
そして今回のカビ問題は『②それ以外の消耗』にあたる可能性が高く、
さらに具体的に言うと『賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等』と位置付けられます。
カビ問題は上記の善管注意義務違反に該当する場合が多いです。
『善管注意義務違反』について
色々難しい専門用語が出てきますが、最後にこの『善管注意義務違反』だけ説明させていただきます。
賃借人は、賃借人として社会通念上要求される程度の注意を払って賃借物を使用する義務が課されています。これを『善管注意義務』と言います。
「善良な管理者の注意義務」の略です。
これを分かりやすく漫画を友達から借りた場合で考えると、
「友達から借りた漫画は、自分が持っている漫画よりも大切に扱わないとね!濡れた手で触ったり、折り目をつけたりしないように注意する義務があるよね!」
といった考えです。
これをカビ問題で考えてみると、お風呂や窓の結露は毎回スクイージーなどで処理し、カビが生えたらすぐ掃除する事により防ぐ事ができます。
お風呂のコーキング・ゴムのカビは『善管注意義務』に該当する場合が多い
したがって、お風呂のコーキング・ゴムのカビは賃借人の通常の使用により生ずる損耗に該当しないという事です。
「いや、お風呂の後とか結露が発生する度に毎回スクイージーで水きったりなんてしないよ。毎回掃除も大変だよ!」
と思う人が多いとは思います。大家のせいやもそう思います。
自分の所有している物件であればその感覚で問題ありません。
しかし、賃貸の入居者さんは部屋を借りている立場となります。
つまり法律用語で言うと「自己の財産と同一の注意をもって」でなく「善良な管理者の注意をもって」管理しなくてはいけません。
この善管注意義務についてより詳しく知りたい場合は、
ガイドラインの第2章の最後にあるQ&AのQ10で解説されています。
カビや、結露についての具体例も触れていますので、確認してみてください。
↓WebサイトにもQ&Aは掲載されています。ガイドラインのデータは大きいので、スマホなどで閲覧したい方は下記のサイトで確認ください。
お風呂のコーキング・ゴムのカビの原状回復に必要な費用と負担割合は?
カビの原状回復における費用の負担割合の問題ですが、クリーニングで消えれば1万円以下の費用で済むと思いますが、染み込んだカビは中々落ちません。
そうなると範囲によりますがコーキングの打ち替えが必要となり、追加で費用が発生します。
他の修理やある程度の長さがなければ注文を受けない場合もありますが、1m辺り3000円から5000円程度の単価です。
では、カビに関する原状回復の請求は全額支払わなければならないのか?という疑問がでてきますよね。
実際には、善管注意義務違反になるとしても、経年劣化が酷くカビやすくなっている、あるいは入居時からカビが多少はあった等の状況はよくあります。
その場合、原状回復の義務が発生しますがその負担割合の計算方法までガイドラインに明記されているわけではありません。
よって、交渉次第では現状回復費用の減額は可能だと思います。
もちろん、相場より明らかに高い原状回復費用は交渉して減額してもらいましょう。
お風呂のコーキング・ゴムのカビのトラブル回避するには?
大家の本音としては、請求する立場でもトラブルになり退去後の精算が長引く事はダメージが大きいです。
かと言って、入居者負担なのに一方的に払いませんと言われてしまうと、裁判などで回収する方向になるかもしれません。
基本的には少額なので裁判にならない場合が多かったですが、原状回復におけるガイドラインが充実してきましたので負担に対する線引きがはっきりしてきました。
ルールが固まってきたという事は、裁判による請求も増える可能性もあります。
やはり落とし所としては、ガイドラインの照らし合わせをしながら交渉する事が現実的だと思われます。
お風呂のコーキング・ゴムのカビ問題のまとめ
いずれにせよカビ問題を回避するには、入居時の状況を写真にとり、管理会社に報告する事や、カビ対策や清掃はきちんと行う事は重要です。
退去時には必ず負担割合などを確認し、納得がいかないところは減額交渉をしましょう。
大家のせいやは、自分で原状回復の作業もしています。
カビが取れないコーキングの打ち替え作業もしています。
また次回の記事で、作業方法を紹介していこうと思います。興味があればご覧ください。
賃貸にお住いの方は、コーキングの打ち替え作業は管理会社等の許可がいると思いますが、そこまで難しい作業でもないのでカビが気になる方は思い切って自分でやってみましょう。
3000円程度でできます。
それではまた!